概要

仮想マシンのディザスタ リカバリを支援する vSphere Replication
VMware vSphere Replication は、vSphere の仮想マシンを対象とする、ハイパーバイザーベースの非同期レプリケーション ソリューションです。VMware vCenter Server および vSphere Web Client と完全に統合されているため、柔軟で、信頼性が高く、費用対効果に優れたレプリケーションを行うことができます。これにより、環境内のすべての仮想マシンのデータ保護とディザスタ リカバリが可能です。
ユースケース:
- 単一サイト内におけるローカル環境でのデータ保護
- 2 つのサイト間でのディザスタ リカバリと Disaster Avoidance(災害回避)
- サービス プロバイダー クラウドを利用したディザスタ リカバリと Disaster Avoidance(災害回避)
- データセンターの移行
機能
柔軟な構成
柔軟なリカバリ オプションが用意されているため、アプリケーションと仮想マシンのデータの一貫性を確保できます。VMware 製品スタックとも連携します。vSphere Replication では次のようなことが可能です。
- 目標復旧ポイント(RPO)を 5 分から 24 時間の間でカスタマイズ
- 複数時点(MPIT)のリカバリを使用して、以前の状態に復元
- vCenter Server 環境あたり最大 2,000 台の仮想マシンを保護
- Microsoft Volume Shadow Copy Service(VSS)を使用
- Linux ファイル システムの静止機能を使用
- VMware Site Recovery Manager を使用してサイト間のディザスタ リカバリを自動化
- VMware vSAN で仮想マシンを保護およびリカバリ
- vSphere Virtual Volumes データストアで仮想マシンを保護およびリカバリ
任意のストレージが利用可能
vSphere Replication は、仮想マシン ディスク(VMDK)単位で動作するハイパーベースのレプリケーション ソリューションです。vSphere がサポートする各種のストレージ間で個々の仮想マシンをレプリケーションできます。基盤となるストレージに依存しないため、VMware vSAN、vSphere Virtual Volumes、従来型の SAN、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)、DAS(直接接続型ストレージ)など、さまざまな種類のストレージで利用できます。vSphere Replication には次のようなメリットがあります。
- リンクしている 2 つのサイトで、それぞれ異なるストレージ テクノロジーを使用(SAN と vSAN、ファイバー チャネル(FC)と iSCSI(Internet Small Computer System Interface)など)
- 旧型のストレージをリカバリ サイトで再利用できるため、コスト削減が可能
- 環境全体ではなく、保護対象の仮想マシンでのみセカンダリ ストレージを使用
ネットワーク帯域幅の削減
vSphere Replication は変更されたデータのみをリカバリ サイトにコピーするため、帯域幅の利用率を抑えることでネットワーク効率を向上させることができるため、システム全体を手動でコピーする場合より短い RPO を設定することが可能です。vSphere Replication には次のようなメリットがあります。
- 初回の同期で仮想マシン データの「シード コピー」を利用できるため、初回コピーの作成に要する時間を削減
- 変更されたディスク領域を追跡し、差分のみをレプリケーションするため、ネットワークを効率的に利用可能
- データ圧縮(オプション)により、ネットワーク帯域幅をより効率的に使用
ハイパーバイザーベースの仮想マシン レプリケーション
vSphere Replication は VMware vSphere に緊密に統合されたコンポーネントであり、ハイパーバイザーベースの堅牢な仮想マシン レプリケーション エンジンです。プライマリ サイトで実行されている仮想マシンの仮想マシン ディスクを追跡し、変更されたデータのみをリカバリ サイトへ送信します。リカバリ サイトでは、仮想マシンのオフライン コピー(レプリカ)の仮想マシンディスクに、プライマリ サイトから受け取った変更データが適用されます。
レプリケーション管理
vSphere Replication は、vSphere に組み込まれたエージェントと、vSphere Web Client を使用して展開した 1 つ以上の仮想アプライアンスで構成されます。まず、エージェントが実行中の仮想マシンを追跡し、変更されたデータをリモート サイトの vSphere Replication アプライアンスへ送信します。vSphere Replication アプライアンスは、該当する仮想マシンのオフライン レプリカ コピーにレプリケーション データを追加します。vSphere Replication 仮想アプライアンスは、レプリケーション プロセスの管理と監視も行います。これによって管理者は、仮想マシンの保護状態を詳細に把握し、数クリックでリカバリすることができます。
レプリケーションの構成
vSphere Web Client を使用することで、最大 2,000 台の仮想マシンのレプリケーションを容易に構成できます。1 台または複数の仮想マシンを選択し、その仮想マシンを右クリックして、RPO とレプリケーション先を指定するだけです。設定後 vSphere Replication は、仮想マシンのコンテンツが定義されたレプリケーション ポリシーを越えて古くならないようにデータをレプリケートすることで、常に RPO を満たすように動作します。RPO は 5 分から 24 時間の範囲で、仮想マシンごとに設定できます。
仮想マシンの同期とシード コピー
vSphere Replication では、レプリケーション元の仮想マシンとそのレプリカ コピーとの間で、最初に完全同期を実行できます。必要に応じてデータのシード コピーをコピー先に配置することで、初回のレプリケーションに必要な時間と帯域幅を最小にします。仮想マシンのシード コピーは仮想マシンのディスク ファイルで構成されており、リカバリ先に配置できます。シード コピーは手動で作成し、管理者が選択した方法(オフライン コピー、FTP、ISO イメージ、仮想マシン クローンなど)でリカバリ サイトに配置します。
インテリジェントな転送
最初の完全同期が完了した後は、変更されたデータのみが転送されます。vSphere カーネルが保護対象の仮想マシンへの書き込みを追跡し、前回のレプリケーション後に変更されたブロックのみを特定して、レプリケーションします。これにより、ネットワーク トラフィックを最小限に抑え、より高いレベルの RPO を設定できるようになります。
シンプルなレプリケーション
仮想マシンのレプリケーション プロセスはシンプルであり、仮想マシンのオペレーティング システムやアプリケーションとは無関係に実行されます。保護対象の仮想マシンからは透過的に行われるため、構成を変更したり継続的に管理する必要がありません。
FAQ
vSphere Replication は、柔軟で信頼性の高いレプリケーションにより、環境内の仮想マシンのデータ保護とディザスタ リカバリ(DR)を実現します。vCenter Server および vSphere Web Client と完全に統合されており、仮想マシンに対して、ホストベースの非同期レプリケーションを実行できます。vSphere Replication は vSphere プラットフォームの機能の 1 つであり、Site Recovery Manager とネイティブに連携しています。
vSphere Replication は仮想ディスク単位で構成するため、どの仮想マシンをレプリケートするかをきめ細かく管理できます。基盤となるストレージ アレイにかかわらず、プライマリ サイトからリカバリ サイト、単一サイトの 2 つのクラスタ間、複数のソース サイトから単一のターゲット サイトへのレプリケーションが可能です。
vSphere Replication のアーキテクチャ、展開、構成、管理の詳細については、vSphere Replication の技術概要をご覧ください。
いいえ。vSphere Replication は、仮想マシンのスナップショット階層をターゲット サイトにレプリケートしません。ターゲット サイトでは、スナップショットが単一の仮想マシン ディスク(VMDK)ファイルに集約されます。つまり、スナップショットを伴う仮想マシンもレプリケーション対象として構成できますが、ターゲット サイトにリカバリされたときは、スナップショットがない状態となります。
注:vSphere Replication には複数時点(MPIT)リカバリ機能が備わっています。MPIT リカバリを使用すると、ターゲット サイトの仮想マシンを最後のレプリケーション コピーにリカバリした後で、以前の時点にロールバックできます。MPIT リカバリを構成し、vSphere Replication を使用して仮想マシンをリカバリする場合、これらのリカバリ ポイントは、仮想マシンのスナップショットとしてターゲット サイトに表示されます。
vSphere Replication は vSphere に緊密に統合されているコンポーネントであり、vSphere の多数の管理機能に対応します。
- vSphere vMotion
- vSphere Storage vMotion
- vSphere DRS、vSphere Storage DRS
- vSAN データストア
- vSphere DPM
- vSphere Flash Read Cache
ほかの vSphere 機能(vSphere Distributed Power Management など)を vSphere Replication と併用する場合は、特別な構成が必要になります。互換性の詳細については、VMware のドキュメントをご覧ください。
vSphere Replication の主なユースケースは次のとおりです。
- 単一サイト内におけるローカル環境でのデータ保護
- 2 つのサイト間でのディザスタ リカバリと Disaster Avoidance(災害回避)
- サービス プロバイダー クラウドを利用したディザスタ リカバリと Disaster Avoidance(災害回避)
- データセンターの移行
また、1 つ以上の仮想マシンをレプリケーションする際にも有効です。
- 特定の vSphere クラスタ内で、または同一サイトの複数の vSphere クラスタ 間で、ローカル データの保護、仮想マシンの移行、ディザスタ リカバリを実行する
- サイトが異なる複数の vSphere クラスタ間で、サイトをまたがるデータ保護、仮想マシンの移行、ディザスタ リカバリを実行する
- オンプレミスのデータセンターから VMware Cloud Provider パートナーのサービスへディザスタ リカバリを実行する
- Site Recovery Manager を使用し、データセンター間でディザスタ リカバリを実行する